きものスタイリスト 大久保信子流 季節を彩る晴れ着スタイル 晴れ着の丸昌 横浜店

秋の婚礼での装い

晴れの日が続き、気候もよい10月は、一年のうちで結婚式がもっとも多い月といわれます。
前回(9月)は招かれた際の装いをご提案しましたが、今回は、結婚式に列席する母の装いをご紹介します。

丸昌のレンタル衣裳を
「大久保信子流」にコーディネート

息子の結婚式・
披露宴での黒留袖

着用シーン

以下の着用シーンに合うアイテムを丸昌の
レンタル衣裳の中から選んでいただきました。

場面 結婚式・披露宴
立場 新郎の母
年代 50代

コーディネートのポイント

  • 列席者に礼儀と感謝を表した装い
  • お祝いの席にほどよい華やぎをもたらす装い

着物

華紋と四季の花をあしらった黒留袖

桐や菊の文様の錦織袋帯

大久保さんのアドバイス

ご子息の門出をお祝いする結婚式。母親は既婚女性の第一礼装である黒留袖をお召しになるのが、出席される方々への礼儀であり、感謝の気持ちの表れでもあります。黒留袖には主役である花嫁を引き立てる効果も。とはいえ、50代のお母さまですから、まだまだお若いと思います。引き立て役だからと地味な着物や帯を選んでしまうと、野暮ったく見えてしまう場合があります。お母さまのキャラクターにもよりますが、気持ち華やかで明るい印象のもののほうが、晴れの席にほどよい華やぎをもたらしてくれるのではないでしょうか。

今回選んだ黒留袖

古典とモダンが融合

黒留袖とは、地模様のない縮緬の生地に、背中、両袖、両胸に染め抜き日向五つ紋を入れるのが決まりです。通常、白の比翼仕立てで模様は裾のみに入れてあります。今回は若いお母さまが対象なので、上品かつ華やかな柄行きを選びました。立体感のある金駒刺繍の華文に、牡丹、菊、桜など幸福や繁栄を表す花々が咲き誇っています。古典的な柄行きながら、ピンクやオレンジといった鮮やかな色彩により、モダンな印象を与えます。縁起物の熨斗を束ねて意匠化した「束ね熨斗」をあしらうことで、華のある着姿を演出してくれます。

今回選んだ帯

着物に合わせて明るめをチョイス

菊唐草に桐、華文など吉祥文様を金糸と色糸で織り上げた錦織の袋帯です。黒留袖の華やかな柄行きが生きるように、全体的に明るい色目の帯を選びました。着物の黒地の上にのせた金糸の帯は、顔色が明るくなるレフ版の効果も期待できます。実際に鏡の前で当てながら、ご自身の表情も確認しながら吟味しましょう。

今回選んだ小物

礼装のルールに則って

帯揚げ、帯締めには白地を選ぶのが黒留袖のルール。白地に金糸の柄を織り込んだ帯揚げ、白地に金色の松がいかにもおめでたい帯締めを合わせました。黒い塗りの骨に金銀の地紙の末広は帯の左脇に差します。

コーディネートした留袖の
レンタルはこちらから

※帯や小物は、丸昌のコーディネーターによる
お見計らいとなります。

今月のメモ

金駒刺繍(きんこまししゅう)

刺繍針に通せない太い糸を木製の駒に巻き、それを動かしながら下絵に沿って模様を描き、別の糸(綴糸)で刺し留める刺繍技法を、「駒取り繍(こまどりぬい)」、「駒繍(こまぬい)」と言います。とくに金糸を使ったものを「金駒刺繍」、「金駒繍」と呼び、黒留袖や振袖に用いることで柄に立体感が出て、高級感も増します。

末広

扇子のこと。次第に末に広がることから、婚礼などの慶事に使用します。黒留袖には黒塗りの骨に金銀の地紙を貼り付けた祝儀扇を。末広には、お相手に対して一歩下がって敬意を示すという意味も含まれています。帯の左脇に要を下にして1.5cmほど先端が見えるように差します。

両家の母の装い

かつては「新郎の母よりも新婦の母の装いを控えめに」といわれましたが、現在ではさほど気にしない傾向にあるようです。ただし、一方が派手で一方が地味ではバランスが悪いため、事前に両家で装いに関して打ち合わせができれば理想的。また、お互いの年齢が大きく違う場合は、地味・派手のバランスを年齢に合わせるほうが自然でよいでしょう。

教えてください! 愛用の一着

シルバーグレーの色無地に
玉虫色の柄が美しい袋帯

――お着物は色無地でしょうか。

大久保さん「シルバーグレーに染め上がっている反物を見つけて仕立てました。地紋は菊に唐草です。色無地は白生地を好みのお色に染めるのも楽しいのですが、仕上がりが想像と違ってしまうこともたまにあるので、こうして染め上がりのものを選ぶこともあります」

――なるほど。背中に一つ紋がありますね。

大久保さん「上り藤。我が家の家紋です。色無地に家紋を入れると略礼装になるので、いざというときにたいへん便利なのよ。『式』と名の付くところならどこへでも出かけられますし、お茶会にもいいわね。グレーなので喪服としても着られます。目上の方にお目にかかるときにも最適です」

――帯も素敵ですが……。

大久保さん「これは出番の多い帯で、もう30年選手なの。龍村美術織物さんの帯です。柄は……何でしょうね? 色々と見立てる楽しみがあるので、今回は秋ということで『すすき』に見立ててみました。玉虫のようにさまざまな色がキラキラ輝いているのが特徴です。色数が多いので、案外どんな着物にも合わせやすいのよ」

大久保信子さんのご紹介

1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。