きものスタイリスト 大久保信子流 季節を彩る晴れ着スタイル 晴れ着の丸昌 横浜店

成人式の装い

満二十歳を迎えた男女を祝う「成人式」。
地域によって異なる場合もありますが、毎年1月第2月曜の「成人の日」に、
地方自治体や企業が主催し、式典が行われます。
今回は、成人式に出席する女性の装いをご紹介します。

丸昌のレンタル衣裳を
「大久保信子流」にコーディネート

成人式で着たい個性的な振袖

着用シーン

以下の着用シーンに合うアイテムを丸昌の
レンタル衣裳の中から選んでいただきました。

場面 成人式
年齢 二十歳

コーディネートのポイント

  • 儀式にふさわしい上品な装い
  • 個性的で目新しさも漂う装い

着物

朱オレンジ色の絞りの中振袖

黒地に菊の柄の袋帯

大久保先生のアドバイス

成人式の起源は、奈良時代の「元服」と言われています。男児が大人になったことを示すために服を改め、髪を結って冠をつける儀式です。平安時代に行われた「裳着(もぎ)」は女性の成人式にあたる儀式。現在のように「成人の日」が国民の祝日になったのは、昭和24年1月15日からのことです。成人式では、多くの女性が未婚の第一礼装である振袖を着ます。昔も今も赤やピンクの振袖が人気ですが、今回はやや個性的な朱オレンジ色を選びました。とはいえ、奇をてらったデザインではなく、伝統的な柄行きと技法による上品な振袖です。一生に一度のイベントですから、自分らしさを表現しつつも、儀式の場にふさわしい装いを目指しましょう。

今回選んだ振袖

さまざまな技法が華やかさを演出

手綱模様の柄取りの中に菊、桜、竹、もみじが施され、おめでたい伝統柄が全身にたっぷりと描かれた振袖です。それらの描かれ方も、絞りや金駒刺繍など、さまざまな技法が駆使されており、たいへん贅沢かつ華やかで、優雅さを感じさせます。地色の朱オレンジ色に光沢感があるのは、金通しの生地だから。振袖の後ろ側と裾のブルーのぼかしには、全体をきりっと締める効果があります。

今回選んだ帯

大きな柄でメリハリを

振袖の柄が緻密で繊細なので、大きめの柄の帯を合わせてメリハリのあるコーディネートにしました。柄行きは、“ねじり梅”のようにひねりのある菊の花に、曲線が美しい組紐。黒の地色に金色の柄付けが映えています。今回は変わり立て矢結び。「未来に向かって羽ばたいてほしい」という願いを込めて、成人式には羽根のある帯結びをします。

今回選んだ小物

さりげなく流行色も取り入れて

重ね衿と帯揚げには、オレンジ色と相性のよい若草色を選びました。こうした色を差し色に使うことで、若々しい印象になります。帯締めには山吹色に紅梅の刺繍をほどこした「丸絎け(まるぐけ)」を。帯締めは組紐が主流となっていますが、丸絎けを使うことで可愛らしさが増します。

今月のメモ

金通し(きんとおし)

織物の縦糸に金糸を織り込んだもの。錦、金襴、金綴れなどがあり、着物や帯に用いられます。今回の振袖は生地が金通しなので、ハリと上品な光沢感があり、礼装にはぴったりな布地です。

丸絎け(まるぐけ)

引き伸ばした真綿を芯に入れ、布で包んで仕立てた棒状の帯締めのこと。かつては留袖などの礼装を中心に用いられましたが、今では振袖や婚礼の衣裳などに使われるほか、おしゃれ着に用いる人もいます。存在感があり、可愛らしさが出るので、成人式の振袖にもお薦めです。一度締めると緩みにくいのも、丸絎けの利点です。

教えてください! 愛用の一着

ぼかし染めの訪問着に
鶴と松の新年らしい染名古屋帯


――お着物がなんとも深い紫色をしていますね。

大久保先生「紫鳶色とでもいうのかしら。紫に茶色が混じったような色で、小豆色にも近いわね。この着物は、30年以上前におしゃれなご婦人にいただいた訪問着なのよ。上質なお着物をたくさんお持ちで、素敵ですね~なんて褒めたらくださったの(笑)」

――膝から下が、グラデーションになっていますが……

大久保先生「ぼかし染めという技法です。生地が銀通しで、とくに裾のほうに銀糸が多く織り込まれていて、遠目に見ると横に縞が入っているようにも見えるでしょう? 銀通しは金通しよりも光沢感に落ち着きがあります」

――背中に紋がありますね。

大久保先生「銀糸の縫い紋がついていて、卒業式や祝賀会などに着ていく式服としても使えます。地味すぎず派手すぎず、ちょうどよい色味なので、10月から4月まで長期間着ています」

――いっぽう、帯は新春らしい柄行きですね。

大久保先生「鶴に松の柄行きなので、お正月にぴったりですし、染帯ですが、おめでたいお席にも締めていけます。帯揚げ、帯締めは白にして、格調高くコーディネートしました」

大久保信子流“今月の晴れ着スタイル”
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大久保信子さんのご紹介

1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。