きものスタイリスト 大久保信子流 季節を彩る晴れ着スタイル 晴れ着の丸昌 横浜店

卒業式の装い

立春を過ぎ、春の声が聞こえ始めると、いよいよ「卒業式」シーズンです。
今回は、大学や短大、専門学校を卒業する女性のための衣裳がテーマ。
たいへん人気のある袴姿に関する装いのポイントをご紹介します。

丸昌のレンタル衣裳を
「大久保信子流」にコーディネート

卒業式での袴姿

着用シーン

以下の着用シーンに合うアイテムを丸昌の
レンタル衣裳の中から選んでいただきました。

場面 卒業式
立場 卒業生
性別 女性
年代 大学・短大生、専門学校生

コーディネートのポイント

  • 若々しさと晴れやかさを伴う装い
  • 学びの場にふさわしい装い

着物

赤地に大矢絣の小振袖

緑地に桜地紋ぼかしの袴

大久保先生のアドバイス

卒業式で人気の袴を、女性が着るようになったのは明治時代から。はじめは女学校の先生が着用しておりましたが、動きやすいこともあって女学生も制服として着るように。昭和に入るとセーラー服などが誕生し、制服も和服から洋服の時代へと変化していきます。しかし、昭和50年代にヒットした漫画「はいからさんが通る」などの影響から、袴姿で卒業式に出席する女子大生が一気に増えました。もともと教育の現場にふさわしい袴姿。卒業の日を迎え、これから新しい道を歩んでいく晴れやかさと若々しさを身にまといつつ、舞台が学業の場であることをわきまえ、恩師や親への感謝の意も考慮しながら、学生らしい装いを心がけたいものです。

今回選んだ小振袖

伝統的かつ個性的な矢絣

"袴に矢絣の小振袖"は、卒業式の定番ともいえる組み合わせ。矢絣にも大きい柄から細かい柄までさまざまありますが、若い女性ほど大きめの柄になります。今回選んだ矢絣もたいへん柄が大きく、若々しさが引き立ちます。地色の赤は元気ではつらつとして見え、羽根に使われた緑色は昨今流行の色で、新鮮な印象を与えます。

今回選んだ袴

小振袖から1色選んだ、流行の緑色を

袴は桜の地紋で緑ぼかしのものを選びました。生地そのものに光沢感があり、光の当たり方によって表情が変わる美しい袴です(丸昌オリジナル商品)。今回の緑色は、小振袖の羽根の緑とリンクしています。全体の基本色は3色でまとめました。

今回選んだ小物

履き物は好みのもので

伊達衿は金糸を織り込んだ柄のある豪華版。コーディネートのポイントとなり、晴れやかさが増します(丸昌ではすべての小振袖に伊達衿をつけてレンタルしています)。足元はブーツでも草履でも。どちらが正しいというきまりはありませんので、好みのものを選べばよいでしょう。

今月のメモ

矢絣(やがすり)

矢絣とは弓矢の「矢羽根」を文様化したもの。明治以降は女学生の袴用の着物によく用いられるようになりました。この文様には「矢のようにまっすぐに幸せを求めて、未来に向かって飛び立ってもらいたい」という親の願いが込められているのです。

小振袖(こふりそで)

振袖には、大振袖、中振袖、小振袖と、袖丈の違いによって3種類あります。小振袖は若々しさ、可愛らしさを強調する袖丈。袴の場合は学生の装いなので、小振袖を使用することが多いです。

足元はブーツ?
それとも草履?

袴姿の足元をブーツにするか草履にするか、悩みますよね。丸昌さんでは6:4の割合で、ブーツのほうに少し人気があるようです。ブーツはなんといっても歩きやすいのが利点です。「はいからさん」のようなレトロな雰囲気が出ますね。いっぽう、白足袋に草履は清潔感があり、古風で伝統的な装いに。どちらを選ぶかによって、着た時の袴の丈も変わります。美しく若々しく装うには、袴の丈が大切です。ショートブーツの場合は、ブーツから脛(すね)が見えない程度がベスト。草履の場合には、長すぎると軽快さが失われるので、足袋の上線に。裾線はやや後ろ上がりに着装すると可愛く見えます。

教えてください! 愛用の一着

蒔き糊のブルーグレーの小紋に
松を図案化した
型染めの名古屋帯

――まるで粉雪が舞い散っているようなお着物ですが……。

大久保先生「蒔き糊という防染技法を用いた小紋の着物です。竹の皮に糊をぬって乾燥させ、細かく砕いてから、濡らした生地に蒔いて白く抜き、細かい点のような模様を出すのよ」

――今頃の季節によくお召しになるのですか。

大久保先生「この点々を雪に見立てて着ることもあるけれど、帯次第で季節を問わず着られる便利な着物なの」

――今回はなんともユニークな柄行きの帯を合わせていますね。

大久保先生「堺映祥(さかいえいしょう)さんの作品です。パステルブルーが明るくて春らしいでしょう? お太鼓と胴の柄は松を図案化した型染めです。ユニークで楽しいですよね」

――あっ、たれにも柄が!

大久保先生「よく見つけましたね! たれには松ぼっくりが2個描かれているんです。堺先生らしい、しゃれっ気や遊び心の利いた名古屋帯だと思います」

大久保信子流“今月の晴れ着スタイル”
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大久保信子さんのご紹介

1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。