成人式や結婚式のお呼ばれなど、華やかな振袖を着る機会は自然と胸が躍ります。ですが、その一方で気掛かりなのがトイレ事情ではないでしょうか。着慣れない振袖だと、普段どおりにはいかないのでは…と不安な方も多いはずです。そこでここでは、振袖でトイレに行く際の手順と注意点について解説。うっかりミスや失敗を防ぐためのチェック項目やトラブル対処法もご紹介します。
目次
振袖でトイレに行くのは難しい?
普段なかなか着る機会のない振袖。そのため振袖を着ている時は、歩く、座る、立ち上がる…といった、日常で当たり前にやっている動作が、普段と同じようにできない場合があります。特にトイレは、その代表例。振袖を着た状態から、どんな手順で何をどうすればいいのか、いまいちイメージができないという人も多いのではないでしょうか。そんなトイレの場面で失敗を避けるには、まず振袖と普段の洋服の違いを認識し、そして振袖の場合に起こりがちなアクシデントを事前に把握しておくことが大事です。
振袖と普段の洋服との違いは?
普段、着ている洋服と振袖では、洋服と和服という大きな違いがあり、その構造や仕立てが随分異なります。そのため、見た目だけでなく着衣の方法にも大きな差があり、振袖の場合だと、次のことが挙げられます。
「振り」と呼ばれる長い袖
振袖を象徴する特徴のひとつが、「振り」と呼ばれる長い袖です。振袖の袖は、他の着物と比べても一際長く、1m以上もの長さがあります。私たちが普段よく着ている洋服の場合、これほど長い袖があるものは見当たりません。そのため、袖に注意を払うのは袖口が濡れやすい手洗いの時くらいですが、振袖の場合は腰を屈めたり階段の上り下りをする時に、床に袖が付かないよう注意したり、腕を上げたり前に差し出したりした時に、周囲のものに当たらないよう配慮する必要があります。
裾がロングかつタイト
振袖の裾は、足の甲に触れるほど長く着付けます。草履を脱いだ室内では、床からの距離がほんのわずかしかありません。また、下半身は左右の身頃をぐるりと巻き付けるように着付けるので脚の可動域は限られており、非常にタイトな感覚です。洋服の種類で表現すると、超ロングのタイトスカートといったところですが、洋服でもなかなか着慣れないタイプのデザインと言えるでしょう。
肌着、長襦袢、着物と何枚も重ねて着る
振袖だけの話ではありませんが、和服はメインの着物の下に長襦袢、その下に肌着というふうに、何枚も重ねて着付けます。これは防寒が目的という訳ではなく、和服のスタンダードな着方です。特に下半身は、それぞれの着物を左右から巻き付けるように着付けるので、布地が何重にもなり、脚さばきに窮屈さを感じる人が多いでしょう。
胸下から腰の広範囲に帯を締める
洋服でもウエストの部分にベルトを締めることはありますが、帯はベルトよりもっと幅があるため、胸下から腰にかけて広範囲に締めることになります。この特性上、深履きのショーツ、腹巻き一体型のショーツなどハイウエストタイプを履くと、履き口が帯の下に重なる場合があります。そしてこの帯の下には、肌着、長襦袢、振袖を固定するための腰紐、伊達締めなども複数本締められているため、この部分にショーツが挟まると、簡単に引き抜けない事態に陥る恐れがあります。
こういった特徴から、振袖を着用している際には、洋服では感じたことのない不便さや、思いもよらない失敗を経験することがあります。
振袖でトイレに行った際に起きやすいアクシデントは?
ここからはトイレのシーンで見舞われやすいアクシデントの例を具体的に挙げてみます。注意すべき場面や事柄を事前にしっかり把握しておきましょう。
長い袖や裾が汚れる
振袖の長い袖は、少し腰を屈めただけで床に届いてしまいます。そのため、便座に腰掛ける前に袖をまとめておかないと、床についたり便座の中に入ったりして汚す可能性があります。また手洗い場付近は、まわりに水が飛び散っていることも多いので、そこでも袖や裾が濡れないよう注意が必要です。その他、着崩れが生じ、裾の位置が下がってしまうと、裾を床に擦ったり、草履で踏んで汚してしまったりする場合も考えられます。
ショーツが下りてこない
ハイウエストタイプのショーツを履いていると、幾重にも重なる着物と帯にショーツの履き口が巻き込まれ、思い切り引っ張らないとショーツが下りてこない…という事態が起こり得ます。焦って引っ張る部分を間違ったり、無理に力が掛かってしまったりすると、着崩れの要因にもなりかねません。
草履が脱げて足袋が汚れる
時間がなく慌てていたり、気持ちに余裕がなかったりすると、履き慣れてない草履が脱げてしまうことがあります。トイレの床、特に手洗い場の付近や清掃直後の床は濡れていることもあるので、脱げると足袋も濡れ、草履ともども汚してしまう場合があります。
帯や裾が乱れる
振袖の場合、帯を華やかな飾り結びにし、ボリュームのある仕上がりにすることが多いため、便座に深く腰掛けると帯が押しつぶされ、崩れるリスクがあります。また、タイトに重なった振袖、長襦袢、肌着をめくり上げたり、もと通りに下ろしたりする際、重ね順を間違ったり、途中で引っ掛かったりすると、裾がきれいに整いません。
衿元にファンデーションがつく
振袖でトイレに行く際は、袖が床につかないように、裾が上手くめくり上がるように…と、普段以上に顔を下に向けがちなため、ファンデーションが衿元についてしまうことがよくあります。メイクの汚れは適切な方法で処置しないと、汚れが余計に広がったり、シミになったりするので、つかないよう事前にカバーすることが大切です。
なお、振袖を着ている時の正しい所作やマナーを心がけておくと、トラブルの発生を防ぎやすくなります。ぜひ以下のページも参考にしてみてください。
晴れ着の丸昌 横浜店 成人式振袖サイト:振袖マナー講座
覚えておきたいトイレの正しい手順
着慣れていない振袖では、洋服ではあり得ないようなアクシデントが起こり得ます。それらが起きて後悔する前に、トイレに関わる重要なポイントをインプットしておきましょう。トイレに向かう前の準備、個室に入ってからの手順、あると役立つグッズなど、詳しく解説します。
トイレに向かう前のポイントをチェック
トイレでの失敗やアクシンデントを防げるか否か、その分かれ道はトイレに向かう前から始まっています。何の準備も心構えもないままだと失敗するリスクが高いので、次の項目をしっかり覚えてからトイレに向かってください。
早めのタイミングが鉄則
普段の洋服と違い、慎重に行動せざるを得ない振袖でのトイレには、いつもより何倍も時間がかかります。それは自分だけでなく、他のみんなも同じこと。順番待ちの時間も長くかかるということです。もうすぐ式典が始まる…といったギリギリのタイミングで行くと、気持ちが慌てて不注意になりミスもしやすいので、早め早めを心掛け、余裕を持ってトイレに行くようにしましょう。
上着やショールは脱いでから
成人式が執り行われる1月は、気温が低く防寒具が欠かせません。上着やショールを着用する人も多いと思いますが、トイレに行く際はこれらを脱いで行きましょう。両手が塞がって動作がしにくい、不注意で落としてしまうといったリスクを事前に排除する意味でも、トイレに行く時はとにかく身軽がいちばんです。
和式トイレではなく洋式トイレ
最近は、ほとんどの施設に洋式トイレがあるので大丈夫だと思いますが、ぜひ洋式トイレを選択してください。和式トイレは深くしゃがみ込む姿勢になるため、振袖が床に触れやすいというリスクがあります。また、洋式トイレのように便座にフタがないので、水を流す際に水滴が飛び散って振袖が濡れる懸念もあります。できれば事前に、成人式の会場のどの場所に洋式トイレがあるか確認しておくと安心です。
できれば広めの個室がベター
振袖は背面に帯結びがあるので、洋服の場合と比べると体の奥行きに幅が出ます。普段なら、トイレの個室で身体の向きや姿勢を変えても壁に当たることは極めて稀ですが、振袖だと帯結びが当たる恐れがあり、場合によっては着崩れの要因にもなります。また、長い袖をまとめたり、着物をめくり上げたりする際も、スペースに余裕がある個室の方がやりやすいでしょう。
お役立ちグッズ持参がおすすめ
普段のトイレとはどうしても勝手が違うので、動作を少しでもスムーズにし、リスク低減につなげるためには、グッズの活用がおすすめです。その1つが大きめのクリップや洗濯バサミなど。2〜3個準備しておくと、長い袖をまとめたり、めくりあげた着物を固定したりするのに役立ちます。着物用のクリップもあるので、それを使うと生地を傷めることなくしっかりと挟むことができます。また、大判のハンカチもあると良いでしょう。首から胸にかけてカバーすることで、顔を下に向けた際にファンデーションが衿元につくのが防げます。その他には、コンパクトに折りたためるサブバッグがあると便利です。持ち物を預かってもらう人や場所が見つからない場合、トイレの個室が狭く持ち物を置くスペースがない場合などは、サブバッグに入れてトイレのドアにかけておくことができます。
失敗しないトイレの仕方をレクチャー
トイレに向かう前の準備が抜け漏れなくできたら、次はいよいよトイレでの動作手順です。頭で覚えるだけでなく、実際に動作を繰り返しシミュレーションしてみて、身体の感覚で覚えておくとより確実です。
【STEP01】 まず便座のフタを閉める
トイレの個室に入ったら、何はともあれ便座のフタを閉めましょう。持っている荷物を置いたり、身体の向きを変えたり、何気ない動作の最中に、全く意図せず袖が便器の中に入ってしまう恐れがあります。リスク因子をできるだけ早く取り除く、これが鉄則です。
【STEP02】 衿元をハンカチでカバー
この後の動作では、顔を下に向ける場面が多くなるので、準備しておいた大判のハンカチを三角にたたみ、首に巻いてフェイスラインをカバーします。こうすることで、お顔のファンデーションが衿元につくのを防ぎます。
【STEP03】 長い袖をまとめる
両袖の袂(たもと)をクリップで帯に挟んで留めます。着物クリップまたは紐の両端にクリップが付いた袂クリップと呼ばれるグッズがあると便利です。袂クリップは紐の部分を首に掛けて使ってください。クリップがない場合は、両袖を身体の前でひと結びします。あまりきつく結ぶとシワになるので要注意です。
【STEP04】 裾を順番にめくり上げる
振袖→長襦袢の順番で1枚ずつ裾をめくり上げます。この時どの裾も、自分から見て左の身頃(=上前)が外側、右の身頃(=下前)が内側に重なっているので、外側を先、内側を後の順番でめくります。それぞれ外側を左手、内側を右手に持って、一枚ずつお尻の上までしっかり上げましょう。
【STEP05】 肌着でひとまとめに持ち上げる
いちばん内側の肌着も左右に分けながら、振袖と長襦袢を包み込むように持ち上げます。SEEP02でもSEEP03でも、着物が裏返しになるようにめくるのがコツで、表側のままたくし上げるとシワになったり、着崩れを招いたりします。
【STEP06】 持ち上げた着物を固定する
持ち上げた肌着の端をクリップで留めて固定します。クリップがない場合は、腕と脇の間に挟んで固定しますが、クリップがあると腕が自由に使えるので、その後の動作もしやすいでしょう。
【STEP07】 ショーツを下ろして便座に腰掛ける
最初に閉めておいた便座のフタを開け、ショーツを下ろして便座に腰掛けます。この時、普段よりかなり浅めに、便座の前の方に腰掛けるようにしてください。帯結びのボリュームがあるので、深く腰掛けると帯が潰れてしまいます。
【STEP08】 便座のフタを閉めて水を流す
用を足したらショーツを直し、便座のフタを閉めてから水を流します。フタが開いたままだと、水が跳ねて振袖を濡らす場合があるので注意しましょう。
【STEP09】 裾を順番に下ろして戻す
裾を留めていたクリップを外して両手に持ち替えたら、肌着→長襦袢→振袖の順番で1枚ずつ下ろしていきます。この時は、めくり上げたのとは逆で、右の身頃(=下前)を先、左の身頃(上前)を後の順番で下ろします。この後、着姿に乱れたところがないかチェックしますが、その詳細は次の段落で解説します。
【STEP10】 個室を出て手を洗う
まとめた袖と衿元のハンカチはそのままの状態で、個室を出て手を洗います。手洗いの際も水が跳ねやすいので注意しましょう。手を洗い終えたら、クリップとハンカチを外します。
トイレが済んだ後のチェック項目
アクシデントに見舞われることなくトイレが済むと、ホッとして緊張の糸が切れてしまいがちですが、ここで油断してはいけません。最後に全身をチェックして、もとの通り美しく整っているか、見た目や着心地で気になる点がないか、確認しましょう。
個室を出る前のチェック
人に見られたくない長襦袢や肌着については、個室を出る前にチェックしましょう。
裾の順番
裾を戻す順番が間違っていたり、途中の位置で引っ掛かっていたりすると、見た目にも違和感がありますし、非常に動きづらい状態になってしまうので、よく確認してください。その重ね順をいちばん外側から言うと次のようになります。
1)振袖の上前(左側)→ 2)振袖の下前(右側)→ 3)長襦袢の上前(左側)→ 4)長襦袢の下前(右側)→ 5)肌着の上前(左側)→ 6)肌着の下前(右側)
裾の後ろ側
身体の前側は気付きやすいですが、後ろ側は案外見落としがちです。裾の後ろ側がきちんと元の位置に戻っていなかったり、めくれ上がっていたりして、長襦袢や肌着が覗いてしまっている場合があるので、忘れずチェックしてください。
鏡を見ながらのチェック
全身をチェックするには見えづらい位置もあるので、鏡を利用しましょう。全身が映る大きな姿見があるトイレが利用できるとベストですが、どのトイレにもあるとは限らないので、手鏡も持っておくと良いでしょう。
おはしょりの乱れ
おはしょりの部分は、トイレの動作でめくれ上がってしまうことがよくあります。身体の前の部分であればすぐ気づけますが、後ろの部分は見逃しがちです。鏡で背面をチェックして、乱れていたら直しましょう。
帯結びの崩れ
帯も背面なのでなかなか気付きづらい部分です。必ず鏡でチェックして、潰れていないか、歪んでいないか、位置が下がっていないか確認しましょう。
衿元のメイクの汚れ
衿元は無理に見ようとすると、ますますファンデがついてしまう可能性があるので、鏡に映してチェックしましょう。カバー用のハンカチは、チェックの直前に外すと良いでしょう。
失敗や気になる点が見つかったら
事前の準備をしっかりして、手順どおりに対処したとしても、何ひとつミスなく済むとは限りません。ですが、最後のチェックで気になる点が見つかったとしても慌てずに。正しい対処の方法や手順を知っておけば、トラブルを乗り切ることや、最小限で留めることができます。
着崩れが生じていた場合
大きく目立つ着崩れは、着付け師などプロの方に直してもらう必要がありますが、些細な着崩れであれば自分で直すことができます。よくありがちな着崩れとその直し方は次の通りです。
◆衿元が緩んでいる
- 左側の身八つ口(脇の下のあき部分)から左手を入れ、振袖の下前(右の身頃)の衿先を軽く引っ張ります。下前が引き締まったら、左手は身八つ口から抜きます。
- 次に、左手で振袖の上前(左の身頃)の衿のゆるみを右側に寄せるように整えつつ、右手で衿の延長線上にあるおはしょりの部分を軽く引きます。
- 最後に、おはしょりの部分を帯と並行に、平らな状態に整えます。長さが余計な部分は帯に挟んで調整します。
◆上前(左の身頃)が下がっている
- 右手で上前を正しい位置に引き上げ、左手で固定します。
- 右手で右側のおはしょりをめくり、締めてある腰紐に引き上げた分を挟みます。
- おはしょりをもとに戻して、帯と並行に、平らな状態に整えます。
◆帯が下がっている
- 両手を後ろに回して帯の下に入れ、元の位置にくるよう持ち上げます。
- 帯の下に小さめのタオルやハンカチを差し込んで、緩みを調節します。
◆お尻がだぶついている
- だぶついている部分を両手で撫で上げ、お尻の上の方へ寄せます。
- 寄せた分をおはしょりの下に締めた腰紐に挟みます。
- おはしょりを帯と並行に、平らな状態に整えます。
振袖や足袋が濡れていた場合
濡れている箇所を擦って拭いたり、絞ったりするのは生地を傷めてしまうのでNGです。ハンカチやタオルなどを濡れた箇所に優しく当て、水分を吸い取るようにしてください。足袋については、トイレだけでなく雨や雪など天候が悪い場合も濡れる恐れがあるので、替えを準備しておくと安心です。
ひどく汚れていた場合
場合によっては、目立つシミができていたり、ファンデやリップが広範囲についていたりするケースがあるかも知れませんが、この場合は不用意に触らないことが肝心です。不適切な処置をしてしまうと復旧不可能な事態にもなりかねないので、汚れには何も手を加えず、その箇所と汚れの種類をメモに残しておきましょう。そして、レンタル衣装の場合は返却の際にショップの方に、自身で所有する振袖の場合は専門のクリーニング店の方に、その内容を伝えて処置してもらいましょう。なお、振袖のレンタルおよび販売業者によっては、軽度の汚れや不測の事態による汚れなら追加料金の請求対象にならない保証サービスを提供しているところがありますので、もし心配であれば利用を検討しても良いでしょう。
最後に
大事な晴れの日の振袖が、トイレの失敗で残念な想い出になるのは避けたいものです。着慣れない衣装なので、どうしても時間はかかると思いますが、事前の準備や心構え、そしてシミュレーション次第でクリアできるものなので、本番当日までに一歩一歩、対策を進めてみてください。
丸昌 横浜店では、振袖レンタルをお申し込みいただいた場合、レンタルケア(¥1,100税込)のサービスをご利用いただけます。この場合、不測の事態によって振袖にシミがついても、クリーニング代は不要となります。
▼レンタルケアについて
晴れ着の丸昌 横浜店 コーポレートサイト:レンタルケアについて
また、振袖と合わせて成人式当日のお支度サービスをお申し込みいただいた場合(*)は、お支度会場にお困りごとのサポートや、着崩れのお直しにあたる専門スタッフがスタンバイしておりますので、万が一、トイレでアクシデントがあったとしても、すぐにご相談いただけます。
*ネットレンタルサイトの場合、振袖および必要小物のフルセットレンタルのみ対応しており、お支度サービスの付帯は承っておりません。