きものスタイリスト 大久保信子流 季節を彩る晴れ着スタイル 晴れ着の丸昌 横浜店

初夏の結婚式の装い

六月は、欧米では気候が良く結婚式が多いシーズンですが、
日本では雨が多く湿度が高い日が多い季節です。
初夏の結婚式にふさわしい装いをご紹介します。

大久保信子流コーディネート

愛娘の門出を祝う夏の黒留袖

初夏の婚礼にのぞむ
花嫁の母の着こなし

コーディネート内容

立場:花嫁の母
年齢:50代
ポイント:列席者に礼を尽くしつつ、初夏らしく涼やかに

母の立場をわきまえた装い

今回は、夏の婚礼にふさわしい絽の留袖をコーディネートしました。花嫁の母親ですので、わが子の晴れ姿を祝う気持ちもありますが、列席者をお迎えする立場であることをわきまえ、既婚女性の第一礼装である黒留袖で礼を尽くします。
婚礼の装いは、あまり季節にとらわれない傾向にあり、空調が効いた室内であれば、通年着られる袷でも良いでしょう。ただ、ガーデンパーティや神社など、屋外で過ごす時間が長いのであれば、状況を見て単衣や絽にしてみてはいかがでしょうか。

礼装のルールを守り、
衣装も小物も涼し気に

夏の礼装について

六月は単衣を着るのが一般的と言われますが、近年では気温が上昇する時期が早く、お茶会等の改まった場面以外では、少し季節を前倒しすることが多く見受けられます。袷、単衣、絽と臨機応変に使い分けると良いでしょう。

絽の黒留袖とは

礼装では緯糸五本ごとに縦糸を絡ませた五本絽が多く使われています。表地のほか、比翼も絽になっており、見た目はもちろん、実際に着用しても大変涼しい作りとなっております。ご自分で袷の留袖をお持ちの方も、絽の留袖は、お持ちでないことが多いかも知れません。現今ではレンタルで気軽に借りられ、お手入れも不要なので大変便利です。

今回選んだ留袖

雲取りに四季の花が描かれ、婚礼にふさわしい華やかさ。百花の王と呼ばれる牡丹など初夏の花が、この季節にぴったりです。菊は秋の花ですが、長寿を象徴する吉祥文様として季節を問わず使われております。

今回選んだ帯と小物

白地に金糸を使った絽の袋帯。芝草に露が下りた様子を文様化した露芝文様は、桃山時代から伝わる伝統的な文様で、涼やかな夏らしい柄です。帯揚げ、帯締め、長襦袢も夏用のものを合わせます。白い絽の帯揚げと、白地に金が入ったレース組の帯締め。草履バッグは、金または銀の礼装用を合わせますが、今回は着物や帯に合わせた金で統一しました。また、留袖に欠かせないのが末広(すえひろ)と呼ばれる礼装用の扇子。帯の左脇に指し、立礼の際には右手に持ち、左手を添えます。

コーディネートした黒留袖の
レンタルはこちらから

※帯や小物は、丸昌のコーディネーターによる
お見計らいとなります。

今月のひとことメモ

比翼仕立て

留袖は、もともと白羽二重(しろはぶたえ)という生糸で織った生地で仕立てた着物を重ね着するものでした。現在では、それを簡略化し、衿、袖口、振り、裾周りにだけ別布を縫いつけ、二枚着ているかのように見せる「比翼仕立て」が一般的です。

御両家の装い

新郎新婦 御両家の装いについて、事前に話し合っておきましょう。お母様が留袖を着用するのかどうか、着用するなら袷か絽か、といったことを確認しておくと安心です。絽の留袖は、袷に比べて黒が薄く見えてしまうため、写真撮影で両家が並んだ際、映りに差が出てしまうことが考えられます。

第一礼装の留袖には必ず、染め抜き日向五つ紋を入れます。女性の紋は、現在では約2.2~2.3cm程度の大きさです。本来は、定紋という正式な紋をつけるものですが、嫁入り前にあつらえた実家の紋が入った留袖を着ることもありますし、地域によっては女紋といって女系に伝える風習もあります。

教えてください! 愛用の一着

遊び心ある、よそゆき小紋

よそゆき小紋

着物は大きく分けて、フォーマルとカジュアルに分けられますが、小紋は後者の代表格。スーツ感覚で着ることができ、観劇や食事会などのちょっとしたお出かけに適しています。
大久保先生「この小紋はしっとりした深い黒地に、七宝、打ち出の小槌といった宝尽くし文様があしらわれています。きちんとした印象を与える一方、遊び心もあり、よそゆきとして重宝しています」

錆朱(さびしゅ)色の帯

帯は伝統色の一つである、錆朱色に、葦(あし)が描かれたもの。
大久保先生「すっきりと涼やかで、黒との相性も良くお気に入りです」

公私とも着物を着る機会が多い中で、とりわけ登場回数が多いのが、地色が「白、黒、錆朱(さびしゅ)色」の帯。礼装でも普段着でも、この3本があればとても重宝します。

大久保信子流“今月の晴れ着スタイル”
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大久保信子さんのご紹介

1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。