七五三の祝い着として着る優美な着物。艶やかに着飾った着物姿の女の子はひときわ可愛く、美しく見えるものです。ですが、いざレンタルor購入しようと思うと、色も柄もさまざまで迷ってしまう方も多いはず。そこでここでは、着物の「柄」に関する情報をご紹介。女の子の着物にはどんな柄が用いられているのか?また、柄の意味や特徴についてもお伝えします。
七五三の着物に描かれるのは、お祝いにふさわしい柄
着物には普段着やおでかけ着として着るカジュアルな着物と、冠婚葬祭や式典などの改まった場で着るフォーマルな着物があります。七五三で着る着物はフォーマルな着物。礼装と言われる格式の高い装いになります。そのため着物に描かれるのは、格調の高い柄が中心です。また、七五三はお祝い事ですから、縁起の良い柄も好まれます。
例えば、中国の思想や信仰などで、良い兆し、おめでたい印として広く使われる吉祥文様。女の子の着物では「松竹梅」や「四君子(蘭・竹・菊・梅を組み合わせた文様)」などが見られます。その他「檜扇」や「貝桶」、「几帳」など、宮中で貴族が用いた道具を意匠化し、典雅な雰囲気が特徴の王朝文様や、長寿や富貴、邪気払いなどの意味や願いが込められた植物や動物の文様などもよく描かれます。
これらはすべて、女の子に対する「美しく育ちますように」「幸福に過ごせますように」「良縁に恵まれますように」といった親の気持ちが表れています。
なお、女の子の着物に描かれる柄は、七歳でも三歳でも大きく違いませんが、身体が大きく成長した分、七歳の着物の方が柄を描ける面積も広くなるため、例えば、束ね熨斗や雲取りなど、広範囲に渡る柄も多く用いられます。そのため、柄の種類やデザインの幅も豊かです。一方、三歳の着物では、被布というベストのような羽織ものを重ねて着ることもあり、小ぶりな柄が着物全体に散りばめられたり、着物の裾や袖、被布の前面に描かれたりと、可愛らしい印象のものが主流。女の子の場合は、こうした差を意識して、年齢ごとの着物を選んでみても良いかもしれませんね。
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七五三の着物は、染めや装飾などの技法も特別
フォーマルな場面で着る格式の高い着物で、「晴れ着」「祝い着」とも言われる七五三の着物には、生地の織りや染め、装飾などにも趣向を凝らした特別な技法が駆使されます。
光の当たり方によって模様が浮き上がって見える地紋には、不断長久を表し、家の繁栄や長寿などの意味を持つ「紗綾形」や、紗綾形の上に蘭と菊の文様を散らし、より華やかな印象を与える「本紋」、桜の花模様が織り出された「桜地紋」などが用いられます。
また、絵画のように緻密で色彩豊かな表現ができる「手描き友禅染め」、指先でつまんだ生地を糸でくくって防染し、それを染料に浸して、染まらなかった白い部分を模様とする「鹿の子絞り染め」など、高度な技術と手間隙のかかる繊細な染めの技術も見られます。
その他、煌びやかな金や銀の箔加工、金糸・銀糸、色糸を用いた豪華絢爛な刺繍など、おめでたい柄をさらに引き立てる装飾が多く用いられ、その華やかで高級感のある美しさは、晴れの日の着物ならでは。女の子の晴れ姿をより一層艶やかに演出します。
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女の子が美しく、幸せになるように…の願いを込めた柄
七五三の着物はどれも格調高く、豪華な印象のものが多いですが、特に女の子の着物は色彩豊かで、華麗さと気品に溢れた柄が主流です。よく使われる柄や装飾には、どんな意味や特徴があるのかご紹介します。
花
女の子の着物の柄でもっとも多いのが花の文様です。日本を代表する花で、人々に広く愛される「桜」をはじめ、古来から親しまれ和歌にも詠まれてきた「梅」、長寿、子孫繁栄など吉祥の意味を持つ「橘」、百花の王とされ富貴の象徴とされる「牡丹」など実に多種多様。また、それらの花々を組み合わせた図柄の花丸や花束、花籠なども見られます。女の子に対して、花のような美しさや華やかさを持つ女性に育って欲しいという想いが込められているのでしょう。
熨斗・束ね熨斗
熨斗は、アワビの肉を薄くそぎ、伸ばして乾燥させたものを紙に包んで、儀式の進物に添えたものが、もともとの起源。文様としては、細長い帯状のものを何本か重ねて描いた「束ね熨斗」が一般的です。人と人とのご縁や絆に恵まれることを表しており、周囲の人たちからたくさんの祝福を受け、幸せを分かち合って欲しいという意味が込められています。
手まり
蹴まりが平安時代の貴族の遊びであったことから、まりの文様は高貴さを表しています。また、丸いまりには、「何事も丸く収まりますように」「丸々と健やかに成長しますように」という願いが込められています。その他、まりは子どもの遊び道具であることから、子どもが寂しくならないためのお守り代わりという意味合いもあるようです。
貝桶
平安時代の貴族の遊びのひとつで、並べた貝殻の中から一対の貝を見つけ出す「貝合わせ」の貝を収めておく容器が「貝桶」です。中世には嫁入り道具のひとつとなり、そういった経緯から、江戸時代には夫婦が添い遂げる縁起物、夫婦円満の象徴とされました。刺繍や金彩などで美しく装飾されることも多く、七五三だけでなくその他の慶事用の着物の文様としても人気です。
御所車・花車
貴族が移動手段として乗っていた雅やかな牛車が「御所車」で、この御所車にたくさんの花を飾ったものが「花車」です。貴族が用いた道具を意匠化した「王朝文様」にあたるもので、高貴さを表しています。典雅な雰囲気があるため、結婚式で花嫁が着る打掛け、母親が着る留袖などにも多く描かれ、古典柄の着物の代表柄とも言えます。
鹿の子絞り
生地をくくったり、縫ったりなどして防染し、染料に浸して染まらなかった白い部分を模様として見せる「絞り染め」の一種が「鹿の子絞り」です。鹿の子絞りは、文様部分をひとつひとつ指先でつまんで糸で絞るという多大な手間隙を要するために贅沢品とされ、江戸時代には何度も奢侈禁止令の対象となりました。白い小さな丸い模様が、小鹿の背中の斑点に似ていることが鹿の子の由来で、可愛らしい見た目と絞った跡の立体感が人気です。
汕頭刺繍
相良、蘇州と並ぶ中国三大刺繍のひとつ。発祥の地、汕頭は広東州の沿海部に位置する街で、18世紀にヨーロッパの宣教師渡来により西洋の刺繍技術が伝わったとされています。ここで東西の文化が融合し生み出されたのが汕頭(スワトウ)刺繍です。レース状になった部分が透けて見える、上品かつデザイン性の高い刺繍で、世界的な人気を博しています。
その他、音に魔除けの効果や、神様に願いや祈りを届ける効果があるとされた「鈴」、優美で愛らしい姿と、卵から幼虫、さなぎ、成虫へと変容していく様子に、女性としての健やかな成長の意味を重ねた「蝶」などの柄も見られます。
最後に
子供の無事の成長に感謝し、これからの健康や幸福を願って行う七五三。そこにある親心は、時代が変わっても同じかと思います。昨今は、七五三の着物の柄もバリエーションが豊富で、目移りしてしまいがちかと思いますが、そんな時は「柄」に注目してみるのも良いのではないでしょうか。その柄が何を表し、どんな意味を持っているのか、ご自身の想いと重ね合わせながら選んだり、お子様に説明してあげたりすると、より深い想い出になるのではないかと思います。
晴れ着の丸昌 横浜店では、伝統的な古典柄を中心に、女の子用の七五三衣裳を豊富にご用意しております。ぜひ間近で柄をご覧いただき、ご試着もされながら、お気に入りの一着を見つけてみてください。
ショールームには、こちらのページでご紹介しているもの以外にも、女の子用の七五三衣裳を多数ご用意しております。