「お宮参りで使った着物は、七五三でも着せられる?」「子供の着物の、一つ身、三つ身、四つ身ってなに?」「七五三の着物は三つ身と四つ身、どちらを選べばいいの?」これらは、七五三を控えた親御さんからよく聞かれる声です。この記事では、分からないことが多い子供用の着物の基本情報を押さえつつ、七五三に着せる着物の選び方や、成長に合わせて長く着るための方法などを分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 子供の年齢や体格に合わせた着物のサイズとその特徴
- お宮参りの産着を七五三衣装として活用するために必要な対処
- 七五三衣装を新調する際のサイズ選びの賢い方法
- 子供の着物を長期間、繰り返し活用するためのポイント
目次
子供の着物の「一つ身・三つ身・四つ身」とは?
お宮参りで着た産着は3歳の七五三でも使えるの?
七五三に使うなら、三つ身と四つ身どちらの着物が良い?
子供用の着物に関するよくある質問
子供の着物の基本 「一つ身・三つ身・四つ身とは?」
「一つ身」「三つ身」「四つ身」とは、子供向けの着物の仕立て方・サイズの呼び名です。子供は成長が早く、衣服はあっという間にサイズアウトしてしまいます。ですが、次々と新調するのは不経済。そこで昔の人は、同じ着物を何年も着られるように、子供の年齢と体格に合わせて着物の仕立て方を工夫してきたのです。
サイズとしては、小さい方から順に、一つ身、三つ身、四つ身となります。それぞれ、身丈(肩から裾までの丈)や身幅(胴まわりの幅)が大きく異なります。さらに特徴的なのは、三つ身と四つ身に施される「肩上げ」と「腰上げ」です。肩上げとは、肩の部分で布をつまみ上げて縫い、袖の長さを調整する方法。腰上げは腰の部分で布をつまみ上げて縫い、着物の丈を調整する方法です。なお、この作業は手縫いで行うので、糸を切れば縫い目は容易にほどくことができます。そのため、丈の長さ調整が可能で、成長に合わせて少しずつ着物を大きくできるという訳なのです。
一つ身の特徴

赤ちゃんの身体に合わせて小さく仕立てられます。背縫いがないため、抱っこされる赤ちゃんの背中に縫い目がゴロゴロ当たらず快適に過ごせます。お宮参りの産着として利用されるのが一般的ですが、お子様の体格によっては、仕立て直して3歳の七五三に再利用する方もいらっしゃいます。
三つ身の特徴

一つ身と比べると、裄丈(首の後ろ中心から手首までの丈)と身丈(肩から裾までの丈)のバランスが取れているものの、子供用として仕立てられるため身幅(胴まわりの幅)は狭め。そのため肩上げ・腰上げをほどいても、着られる期間はあまり長くありません。お子様の体格にもよりますが、一つ身、四つ身で代用できることもあるため、あえて三つ身を仕立てるのは稀なケースです。
四つ身の特徴

並幅の反物から、身長の4倍の長さの布を裁断して仕立てることから「四つ身」と呼ばれます。(諸説あり)子供用の着物としては、最も一般的な仕立て方のひとつ。子供の成長を見越した裁ち方になっているため、肩上げや腰上げでサイズを調整しながら、長く着回すことができます。
子供の着物の疑問01「お宮参りで着た産着は3歳の七五三でも使えるの?」
お宮参りの時に着せた想い出の産着を、3歳の七五三でもう一度着せたい…という声はよく聞かれます。そこでここからは、実際にそれが可能かどうか、どうすれば使えるのか、詳しくご説明します。

産着が使えるケースとその対処法
3歳の七五三と言っても、すべてのお子様が3歳を迎えたタイミングでお祝いをする訳ではありませんし、体格には個人差があります。そのため一概には言えませんが、2歳〜3歳頃のお子様であれば、お宮参りの産着が使えるケースが多いのではないでしょうか。お子様に産着を着せてみて、丈や幅が十分に足りていれば大丈夫です。ただし七五三衣装として使用するにあたっては、次のように仕立て直す必要があります。
仕立て直し1:袖を「袂」に縫い直す
お宮参りの産着は袖が筒状になっているので、これを丸みのある袂(たもと:振袖のような袖)に縫い直します。
仕立て直し2:左右に付いている紐を外す
赤ちゃんに産着として着せる際には、帯の代わりとして胸のあたりに縫い付けた左右の紐を用いますが、この紐は不要なので糸を解いて外します。
仕立て直し3:肩上げ・腰上げをする
お子様の体格に合わせて肩上げ・腰上げを施し、適当なサイズに調整します。
また女の子の場合、3歳の七五三衣装と言えば、被布を重ねるスタイルが一般的ですが、男の子の場合、女の子と同様の被布スタイルの他に、羽織と袴を合わせるスタイルも選択できます。どちらにするかで、準備するアイテムが変わってくるため、ご家族の中で検討しておきましょう。
被布スタイルに必要なアイテム
被布スタイルの場合、着物は兵児帯(へこおび)と呼ばれる柔らかい帯で着付け、その上に被布(ひふ)というベストのような形状の羽織ものを重ねます。兵児帯、被布の他にも、肌着や長襦袢、腰紐といった着付け小物、草履や足袋も必要になります。
羽織袴スタイルに必要なアイテム
羽織袴スタイルは、着物と袴を着用した上に、羽織を重ねて仕上げます。着物、袴、羽織の3点が基本アイテムですが、着付け小物や草履・足袋に加え、角帯(かくおび:着物の上から締める男性用の帯)や羽織紐(はおりひも:羽織の前がはだけないように留める紐)、懐剣(かいけん:懐に入れて持ち歩いた護身用の短剣が由来。現在は装飾品))や白扇(はくせん:末広とも呼ばれる縁起物の扇)といった、羽織袴スタイル特有の小物も必要になります。
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産着を七五三衣装に使う際の注意点
お宮参りの産着は3歳の七五三衣装になり得ますが、実際に着用する前にはいくつか注意点もあります。時間や費用の問題もありますが、お祝い着としての見映えにも関わるので、よく確認の上、判断なさってください。
注意点1:仕立て直しの時間とコスト
産着を七五三衣装として着るには仕立て直しがマストです。和裁ができる方ならよいのですが、初心者の場合はそれなりに時間がかかるでしょう。ご家庭での対処が難しければ、産着を購入した呉服店や、仕立て直しサービスに依頼する方法もありますが、そのぶん費用はかかってしまいます。
注意点2:足りないアイテムの準備
費用がかかるのは、仕立て直しだけではありません。産着だけがあっても、七五三の衣装としては成立しないので、足りないアイテムは購入またはレンタルで一式揃える必要があります。
注意点3:着用時のバランスと美しさ
産着はそもそも乳児用の着物ですので、スラッと長身で手脚も長いお子様には、袖や裾の長さが足りずアンバランスな見た目になる可能性があります。記念写真を撮られる場合は、その姿がずっと残ることになるので、美しい着姿になるかどうかも考慮されるとよいでしょう。一つ身の着物が七五三衣装として美しく着られる年齢としては、3歳は可能性高め、5歳は小柄なお子様でギリギリ、7歳はムリだと考えておくのが無難です。
子供の着物の疑問02「七五三に使うなら、三つ身と四つ身どちらが良い?」
女の子なら3歳と7歳、男の子でも地域によっては3歳と5歳というふうに、七五三の衣装を着る機会は複数回訪れます。この場合、三つ身と四つ身どちらを選択すべきか…と迷われる方も多いでしょう。ここではレンタルで調達する場合・既に所有している場合・新たに購入する場合に分けて、賢い選び方や美しい着方のヒントをご紹介します。

「レンタルで衣装を調達」するなら、体格に応じて選べばOK
レンタル店の衣装は、用途や年齢に応じて適当なサイズがラインナップされています。また、小さめ・標準・大きめといった具合にサイズ展開があるのが一般的なので、三つ身か四つ身かを意識する必要ありません。大幅な肩上げや腰上げをしなくても、美しいバランスで着られる衣装が揃っていますので、お子様の年齢や体格に適した、もっともお似合いのものを選んであげてください。
「所有している衣装を利用」するなら、必要に応じて調整を
兄弟姉妹のお下がりや、親戚、知人から譲り受けたものなど、既に七五三衣装が手元にあるという方もいらっしゃるでしょう。その衣装が三つ身の場合は、3歳の七五三衣装に最適です。お子様の体格に応じて肩上げ・腰上げしてご活用ください。なお、数えの4歳や標準より小柄なお子様なら、5歳の七五三でも三つ身の着物が使える可能性があるでしょう。ただし7歳になると、三つ身では寸法が足りず衣装として使えないので、レンタルか購入をご検討ください。
一方、所有されている衣装が四つ身の場合、3歳・5歳・7歳いずれの七五三にも利用できる可能性があります。3歳はまだ手足が短く、幼児特有の体型であるがゆえ、着物と体格のバランスが取りづらいかもしれませんが、5歳、7歳であれば適度な肩上げ・腰上げで美しく着こなせるでしょう。
ただし、どの年齢であっても、着物しかない場合は七五三の衣装として成立しません。それぞれの年齢に応じて必要なアイテムを準備してあげてください。なお、レンタル衣装店の中には、所有する着物の「持ち込み」が可能なところもあり、足りないアイテムだけをレンタルできるケースがあります。購入するより手軽かつリーズナブルに利用できることが多いので、検討なさってください。
「新たに衣装を購入する」なら、四つ身を選ぶと長く着られる
2〜4歳前後の子供向けとされる三つ身の着物が5歳、7歳で着られるケースは稀です。七五三衣装として着るとすれば、3歳のときの1回限りとなるでしょう。ですが、四つ身の着物なら、男児の3歳・5歳、女児の3歳・7歳と二度着られる可能性が高まります。四つ身は、仕立てに必要な布の分量が多いぶん、三つ身より高額な場合が多いですが、肩上げ・腰上げの調整で、成長に応じて着られるだけでなく、糸をほどいてやり直すこともできるため、兄弟姉妹でも着回せて大変経済的です。購入という選択をするのであれば、三つ身ではなく四つ身を選ぶのが賢明と言えるでしょう。
ひとつの着物を長く着るための工夫
レンタル衣装の場合、商品として複数のお客様に貸し出す前提であるため、借り手側が好きなように肩上げ・腰上げをすることは難しい場合が多いですが、お下がりなどでお手元にある着物、購入された着物であれば、その心配はありません。湿気を避けての保管、年に数回の虫干しなど、適切にメンテナンスしていれば長く着られるので、七五三だけでなく、入園・入学の記念、結婚式への列席など、晴れの場にどんどん活用していきましょう。
例えば、3歳の七五三で着物に被布を重ねて着る場合は、お宮参りと同じ着物であっても、また違った雰囲気のコーディネートが楽しめます。また、7歳の七五三で着た着物でも、合わせる帯や小物を変えると、印象が大きく異なり、ご親族の結婚式などでも重宝するでしょう。レンタル衣装店の中には、それらを単品で貸し出してくれるところもありますし、相談すれば上手なコーディネートのヒントやアイデアも得られると思いますので、ぜひ活用してみてください。
子供用の着物に関する「よくある質問」
ここでは、子供用の着物を長く着回したいと思った際に、多くの親御さんがつまずきがちな疑問をQ&A形式でまとめています。
Q1:着物の肩上げ・腰上げは自分でできますか? それとも専門店に頼むべきですか?
簡易的な肩上げ・腰上げであれば自分でも可能ですが、行事に着せる場合は専門店に依頼するのがおすすめです。理由としては次のことが挙げられます。
- 見た目のバランス(左右の高さ・丈の均等)がとても重要
- 成長に合わせた適切な位置決めが必要である
- 写真撮影では縫い目の乱れが目立ってしまう
普段着の調整程度であれば家庭でも対応できますが、七五三用はプロ仕上げが安心です。
Q2:お宮参りの着物を仕立て直す場合、どれくらい前に依頼すればいいですか?
着用を予定している時期の2〜3ヶ月前には依頼することをおすすめします。仕立て直しにかかる期間は、通常2週間〜1ヶ月程度ですが、七五三シーズン(10〜11月)は依頼が混み合うため、余裕を持って依頼しましょう。また、仕立て直しを依頼する際は、以下を持参するとスムーズです
- お宮参りの着物
- お子様の現在の身長・体重のメモ
- 七五三のお参り予定日
- 予算
Q3:四つ身の着物は3歳には大きすぎませんか?七五三でも着られるように調整できますか?
調整は可能ですが、実用的ではないケースが多いでしょう。四つ身は身丈・身幅ともに大きく、3歳には以下のような問題が出ます。
- 肩上げ・腰上げを大きく取りすぎて見た目が不格好になる
- 被布を重ねると全体のバランスが崩れる
- 歩きづらく、着崩れしやすい
3歳で着ることを優先するなら三つ身が最適と言えるでしょう。四つ身は5歳・7歳以降の正式な着付け(帯結び)に向いた着物と覚えておきましょう。
Q4:ひとつの着物を3歳と5歳の七五三衣装として使うことは可能ですか?
その着物のサイズと仕立てによります。三つ身や四つ身で、肩上げ・腰上げがされている状態であれば、成長に合わせて丈を調整可能です。ただし、一つ身や身丈が極端に小さい着物は、5歳まで使うのは難しいです。実際に使用する前に、寸法を測り、肩上げ・腰上げの調整ができるかを確認してください。
最後に
身体がどんどん成長することを見越した上で、できるだけ長く着られるような裁ち方、仕立て方がされている子供の着物。資源を大切にし、物に対して感謝して使う「もったいない」という日本特有の精神、文化がここにも生きているのかもしれません。
着物の身丈や身幅に支障がなく着られるのであれば、一つ身の産着を3歳の七五三に、四つ身の着物を5歳や7歳の七五三に活用なさってください。同じ着物を兄弟姉妹で受け継いで着るのも、ご家族の素敵な想い出になると思います。
晴れ着の丸昌 横浜店では、お手持ちの着物の肩上げ・腰上げといったサイズ調整はお受けできませんが、被布や袴といった足りないアイテムの単品レンタル、コーディネートのアドバイスは対応可能です。ご希望の方は、ご来店のうえスタッフにご相談ください。












