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既婚女性の正礼装(第一礼装)、黒留袖の知識

既婚女性の正礼装(第一礼装)、黒留袖の知識

結婚式などで新郎新婦の母親や親族が着る黒留袖は格式の高い既婚女性の正礼装(第一礼装)です。黒留袖の歴史や特徴、年齢に応じた着こなし方などについて、知っておいていただきたいことをご紹介します。

(※この記事は2018年1月31日に公開したものを加筆修正しました。)

この記事で分かること

  • 黒留袖は慶事用の着物で、中でも最も格式の高い正礼装にあたる
  • 黒留袖を着用できる人や機会は決まっている
  • 黒留袖を着る際は、場面や立場に応じた着こなしのマナーがある

目次

黒留袖とは?その特徴について
黒留袖の起源は?その由来と歴史について
黒留袖はいつ誰が着る?着用の機会について
黒留袖はどう着こなす?着用マナーについて
黒留袖についてのよくある質問

黒留袖とは?その特徴について

黒留袖は、慶事に用いられる礼装です。礼装には、格式が高い順に正礼装(第一礼装)/準礼装/略礼装があり、黒留袖は正礼装にあたります。また、着用するのは既婚女性と決まっており、仕立てや紋、柄にも独特のルール、決まりごとがあります。

生地の特徴

黒留袖には、一越(ひとこし)ちりめんという生地が使われるのが一般的です。この生地は、シボ(生地の表面に浮き出た凹凸)がとても細かいのが特徴です。黒留袖の名前の通り、地色は黒一色です。

仕立ての特徴

黒留袖には、比翼仕立てが用いられます。昔は白羽二重という着物の上に黒留袖を重ねて着ましたが、それを簡略化したものです。白羽二重を着る代わりに、衿、袖口、振り、裾にだけ白羽二重の別布を縫いつけて仕立てます。

紋の特徴

黒留袖には5つの紋を入れるのが決まりです。紋の入れ方は、背に1つ、両袖の後ろと両胸にそれぞれ1つずつ。最上格となる「染め抜き日向紋」で入れます。色留袖のように三つ紋や一つ紋にすることはありません。

柄行の特徴

黒留袖は、裾部分にのみ柄が描かれます。一枚の絵のように、縫い目で途切れない描き方が特徴です。これを絵羽模様(えばもよう)といいます。吉祥文様、有職文様、正倉院文様など、縁起の良い柄、品格のある柄が多く描かれます。昨今は、現代的でモダンな柄も増えています。

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黒留袖の起源は?その由来と歴史について

かつては黒留袖を含む「留袖」は、既婚女性が普段着用する着物全般を指しました。江戸時代、女性は18歳になった時や結婚した後に、それまで着ていた振袖の袖を短く仕立て直し、身八口を縫い留めるという風習がありました。袖を「切る」というと「縁を切る」で縁起が悪いため「袖を留める」「留袖」となったのです。

袖を短くする理由には「袖が長いと家事などの際に動きづらい」というものと、もうひとつ「男性に好意を伝える必要がないから」という理由があります。どういうことかと言うと、かつての日本では女性から男性に気持ちを伝えるために、長い袖を振って合図をしていたというのです。既婚女性はその必要がなくなるので、娘から妻となったひとつの印として、袖を短くしたと言われています。ちなみにこの袖は保存して子どもが生まれた時に産着に使ったとか。

この頃の留袖は振袖をリメイクしたため、さまざまな色があったのですが江戸時代の後半から、人々の間で既婚女性の式服となりました。黒く染めた留袖に五つ紋(背中、前の左右、袖の左右の計5つに家紋)を入れ、裾だけに模様を配した着物が広まり、留袖といえば黒の式服を指すようになりました。裾部分の柄は、江戸褄(えどづま)模様といわれ、江戸大奥の御殿女中、または江戸深川の芸者衆の流行を真似たなどの説があります。

また、留袖が黒いのは西洋のブラックフォーマルの概念が影響を及ぼしたとも言われ、明治以降には現在のような黒留袖が一般的になったようです。

黒留袖はいつ誰が着る?着用の機会について

黒留袖の代表的な着用シーンは結婚式や披露宴です。ただし、着用できるのは既婚女性だけ。また、新郎新婦と関係の近い親族または仲人夫人に限られ、ゲストとして招かれた場合は着用しません。

黒留袖の着用がふさわしい事例としては次の場面が挙げられます。ですが、地域や風習などによって着用のマナーやルールが違う場合もあります。また、両家の格を揃えることが大切なので、着用するかどうかは事前に両家で打ち合わせをして決めましょう。

お子様の結婚式・披露宴

黒留袖は、新郎新婦の母親にふさわしい衣装です。格の高い黒留袖で迎えることで、式の参列者に最大限の敬意をあらわし、礼を尽くすことにつながります。

ご親族の結婚式・披露宴

黒留袖は、新郎新婦の身内の既婚女性も着用できます。祖母、姉妹、伯母(叔母)といった親族にあたる方であれば問題ありません。

仲人役を受けた結婚式・披露宴

黒留袖は、仲人夫人の装いとしても適切です。品格の高さを感じさせ、おめでたい席をいっそう華やかにします。

お子様の結納式

正式な結納式を執り行う場合、母親や仲人夫人が黒留袖を着用します。ただし、最近は略式の場合が多く、一般的ではありません。

格の高い第一礼装

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黒留袖はどう着こなす?着用マナーについて

ご紹介してきたように黒留袖は正式な場で着用される大変格式の高い着物です。そのため、着こなしにもきちんとした品格が求められます。柄選びや帯、小物類のコーディネートにも気を配り、晴れの場にふさわしい着こなしを目指しましょう。

黒留袖の柄選びのポイント

黒留袖の柄は、立場と年齢に合ったものを選びましょう。柄はさまざまなものがありますが、描かれたモチーフ、色合い、大きさ、範囲などで大きく印象が変わります。場面に応じた着こなしはマナーとしても重要です。

新郎新婦の母親の場合

黒留袖の柄は、落ち着いた雰囲気で格調の高いものがおすすめです。列席者への感謝と敬意を表すデザインを選びましょう。

仲人夫人の場合

黒留袖の柄は、気品のある柄が適切です。主役の花嫁が引き立つよう、華美ではない、落ち着いたデザインを選びましょう。

若い方の場合

膝上まで広範囲に柄が入った黒留袖がおすすめです。大きめの柄、美しい色合いのものは、若い方にふさわしい華やかさを感じさせます。

年配の方の場合

柄が低めの位置にすっきりと配置されている黒留袖がおすすめです。年齢相応の落ち着いた印象になり、上品さが際立ちます。

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黒留袖に合わせる小物選びのルール

黒留袖に合わせる小物は、いくつか種類がありますが、どれも着用ルールが決まっています。マナーとして必要な内容なので、必ず確認しておきましょう。

帯、帯締め、帯揚げ

黒留袖に合わせる帯は、袋帯が基本です。デザインは、金や銀などの箔があしらわれた豪華で格調の高さを感じさせるもの。これを二重太鼓で締めます。帯締めや帯揚げの色は、白が基本。白地に金や銀が入っているものでもOKです。

長襦袢、半衿、足袋

黒留袖の場合、長襦袢と半衿、足袋は必ず白色のものを合わせます。薄く色のついたもの、柄の入ったものもありますが、黒留袖に合わせる場合は用いません。

草履、バッグ

黒留袖に合わせる草履とバッグは、金や銀、白を基調にしたものを選びます。黒留袖の品格に負けないものをコーディネートしましょう。

末広

黒留袖を着用した際は、末広が欠かせません。末広は「祝儀扇」とも呼ばれる扇。これを体の左側の帯に差します。

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黒留袖についてのよくある質問

ここでは、黒留袖を着用する際に出てくる「よくある質問」について解説します。

Q1. 未婚女性は黒留袖を着用できますか?

黒留袖は既婚女性が着用する着物です。基本的に、未婚女性は着用できません。未婚女性が着用する着物で、黒留袖と同じ正礼装にあたるものは振袖です。

Q2.友人の結婚式に招かれた場合、既婚女性であれば黒留袖を着てもいいですか?

黒留袖は慶事用の着物で、結婚式にふさわしい衣装です。既婚女性が着用しますが、結婚式に招かれたゲストが着用するのはNGです。黒留袖の着用は、新郎新婦の母親や近しい親族、仲人夫人に限られます。

Q3. 黒留袖の紋は、着る人の家紋でないとダメですか?

黒留袖の紋は、場合によって様々です。実家の家紋の場合もあれば、婚家の家紋の場合もあり、統一化されたルールはありません。着る人の家紋でないといけない、ということもありません。レンタルの黒留袖の場合は、通紋といわれる便宜上の紋が付くことが一般的です。詳しくはこちらの記事もご覧ください。

Q4. 黒留袖の柄の選び方は年齢によって違いがありますか?

黒留袖の柄については、裾に描かれた柄の面積が大きいほど若向きとされています。そして、面積が小さく、柄の位置が低くいほど年配者向けのデザインとされています。一般的にはそう言われているものの、様々なタイプの柄がありますので、着用される方の立場、会場の雰囲気、式のスタイルなどに応じて選ばれると良いでしょう。

Q5. 黒留袖は購入とレンタル、どちらが良いでしょうか?

着用の機会が多い、生地や家紋など仕立てにこだわりたい、子や孫に受け継ぎたい、というような方の場合は購入が向いているでしょう。一方で、着用頻度が低い、保管や手入れに手間をかけたくない、その時々で好きな柄を着たい、というような方の場合はレンタルが向いているでしょう。

最後に

さまざまな決まりごとのある黒留袖ですが、ルーツやその意味を知ればそれほど難しく考えず着こなせるのではないでしょうか。特別な一日に黒留袖を着ることで品格を添えてみてはいかがでしょうか。

晴れ着の丸昌 横浜店では、上質な正絹素材の黒留袖を多彩に取り揃えております。その中から、新郎新婦のお母様やご親族、仲人夫人など、それぞれのお立場や年齢に応じた一着をご提供いたします。また、着用に関するマナーやルール、風習など、疑問や不安にお思いのことがあります場合は、お気軽にご相談くださいませ。和装マナーの専門知識を有するスタッフがサポートさせていただきます。

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