黒留袖を着る機会は、親族の結婚式か、仲人をする場合に限られるので、一般的にはそれほど多くはありません。ですが、着用にまつわるルールが色々とあるため、それを知らずに自己流で着てしまうとマナーに反してしまったり、恥ずかしい思いをしてしまう可能性も…。そこでここでは、黒留袖を結婚式で着る場合の着用ルールについて、基礎知識をお伝えします。
(※この記事は2017年8月22日に公開したものを加筆修正しました。)
結婚式でよく着られる和装の種類
まずは、結婚式などフォーマルシーンで見かけることの多い和装にはどんなものがあるか、基礎知識をおさらいしましょう。
黒留袖
地色が黒の留袖です。背中と両胸と両後袖に計五つの家紋が付き、裾まわりにだけ柄が入っています。胸や袖など、上半身は無地で柄がないのが特徴です。描かれる柄は、縁起のよい吉祥文様や重厚な有職文様など、格調の高いものが中心です。生地には、一越縮緬などの地模様のない縮緬が用いられます。最も格式が高いとされる慶事の正礼装(第一礼装)で、結婚式や披露宴などで、既婚の女性親族が着用します。
色留袖
地の色は黒以外になりますが、裾まわりだけに柄が入り、上半身が無地である点や、吉祥文様な有職文様など格調の高い柄が描かれる点は、黒留袖と同じです。紋は黒留袖と同様に五つ紋を入れるか、使い勝手を考慮して、三つ紋または一つ紋を入れます。五つ紋の場合は黒留袖と同格の正礼装(第一礼装)となり、結婚式で新郎新婦の親族女性が着用するのにふさわしい着物と言えます。(ただし、新郎新婦の母親は黒留袖が一般的)また、三つ紋や一つ紋の場合は準礼装となり、結婚式にゲストとして列席する場合に着用できます。近年は未婚、既婚を問わずに着られます。
訪問着
色留袖と似ていますが、裾だけでなく胸や肩、袖などの上半身にも柄が描かれているのが特徴です。華やかな場面に合う準礼装の着物で、未婚、既婚を問わずに着られます。着用シーンは大変幅広く、結婚式のお呼ばれ、お宮参りや七五三、入学式や卒業式などの子供の行事の付き添い、親しい方との食事会や同窓会、観劇やコンサートなどに活躍します。
振袖
成人式などでおなじみの振袖は、未婚女性の正礼装(第一礼装)です。お祝いの席をいっそう華やかに彩ります。振袖には、実は「大振袖」「中振袖」「小振袖」と種類があり、袖の長さに違いがあります。袖がもっとも長い大振袖は気品と艶があり、花嫁の婚礼衣装として着用されます。大振袖に次いで袖が長いのが中振袖で、成人式でよく着用されるのがこれにあたります。成人式の他にも、結婚式への列席や祝賀会やパーティなどの華やかな場で着用されます。小振袖は3つの中で最も袖が短く作られており、軽くて動きやすいのが特徴です。卒業式の衣装として、袴を合わせて着用されるのが一般的です。
関連記事
結婚式で黒留袖を着るのはどんな人?
黒留袖は、新郎新婦の母親、祖母や叔母、姉妹などの親族や、仲人夫人など、新郎新婦に近い人の装いです。結婚式にお招きする側が最も格の高い着物を着ることで、ゲストへの敬意と感謝を表すという意味合いがあります。
新郎新婦の母親
新郎新婦の母親が和装にする場合は、礼装のなかでも最も格の高い五つ紋の入った黒留袖の着用がおすすめです。
最近の結婚式では新郎新婦の母親が黒留袖を着ないこともありますが、結婚式では両家の格を揃えることが理想です。格の差が出てしまわないように、事前に打合せしておきましょう。
新郎新婦の親族(祖母、叔母、姉妹など)
新郎新婦の姉妹や祖母、叔母など親族が結婚式に着物で出席する場合は「正礼装」や「準礼装」にするのが一般的なマナーです。新郎新婦の母親が黒留袖ならば、親族の既婚女性は黒留袖や色留袖、未婚女性なら振袖がふさわしいでしょう。
また、地域によっては親族の女性は全員が黒留袖を着用することになっているところもあります。あらかじめ結婚式前によく確認して、両家親族の装いの「格」を合わせるようにしましょう。
仲人夫人
仲人夫人として結婚式や披露宴に出席する場合は、黒留袖がもっともふさわしいとされています。
関連記事
なお、結婚式のスタイルの多様化をはじめ、さまざまな事情から洋装のドレスを着用される方もいらっしゃいます。この場合も、黒留袖と同様に着用される方の立場やマナーに応じた選び方や着こなしが重要です。
関連記事
友人の結婚式で黒留袖を着るのはNG
黒留袖は、新郎新婦の親族としてゲストをお迎えする立場の人の装いですから、友人知人の立場で結婚式に招かれた際には着用するのはマナー違反です。
既婚女性なら黒留袖より格下の一つ紋の色無地や付け下げ・訪問着・江戸小紋など準礼装から略礼装にあたる着物がおすすめです。未婚女性の場合は振袖で結婚式に花を添えるのも喜ばれます。
関連記事
黒留袖のコーディネートは自由にしていいの?
黒留袖は非常に格式の高い着物で、結婚式では新郎新婦の親族女性が着用するということはご理解いただけたかと思いますが、着物が黒留袖でさえあれば、あとはどんなコーディネートをしてもいいのか…というと、そこにもルールがあります。
基本的な考え方としては、正礼装(第一礼装)としてふさわしい格式の高いコーディネートにする、という点がポイントです。帯は錦織や唐織、綴れ織などの重厚で華やかな袋帯を合わせ、帯揚げや帯締めは白色にするのが基本です。また、帯には末広と呼ばれる祝儀扇を挿します。草履やハンドバッグも礼装用がふさわしく、素材やデザインを合わせたセットのものがおすすめです。その他、着付け小物として欠かせない長襦袢や半衿、足袋も白色を合わせます。
なお、アクセサリー類は結婚指輪以外、つけないのが基本です。メイクや髪型も、結婚式の主催者としての立場を考慮し、黒留袖の気品や美しさがより引き立つと同時に、お客様に礼を尽くした装いになるよう心がけましょう。
関連記事
最後に
黒留袖に限らず、和装は、既婚か未婚か、新郎新婦との関係性はどうか(親族か友人・知人)など、着る人の立場によって着るものが変わります。基礎知識をきちんと押さえ、結婚式にふさわしい着物を選んで、祝福の気持ちを表現しましょう。
丸昌 横浜店では、新郎新婦のお母様にもご親族の方にもご満足いただけるよう、上質な正絹素材の黒留袖をバリエーション豊富に取り揃えております。また、黒留袖以外の晴れ着も、色留袖、色無地、訪問着、振袖と幅広くラインナップしておりますので、お気軽にご相談ください。お客様のお立ち場や、年齢、結婚式の会場やスタイルに応じて、ルールに則った晴れ着と、合わせる小物類一式をご提案させていただきます。